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美術館コンサート「水嶋一江ストリングラフィ・アンサンブル」 00/08/12-13 |
2000年8月東京木場−東京都現代美術館にて 暑い夏の日に、そのコンサートは行なわれた。 外のうだるような暑さとは打って変わって、地下の講堂に張り巡らされた"ストリングラフィ"は涼しげな佇まいで、観客を迎えた。 そして、奏者が舞台に現れ楽器を爪弾くと、ある時は優しく、激しく、またはたおやかにその姿を変え、満場の観客を魅了した。 まず特記すべきことは、今回の公演が、美術館での「三宅一生展」の会期中にあたるという巡り合わせにより、衣裳としてA-POCを提供して頂いたことである。 A-POCとは、A Piece Of Clothの略で、1枚の布からなる衣服であり、その布は1本の長い糸から出来ている。 この「糸」はまさに、〃ストリングラフィ〃に通ずるキーワードであり、出会いの妙を感じた。 コンサートは2部構成で行なわれた。 1部は誰もが耳にしたことのあるような曲で綴られた。 ストリングラフィでもお馴染みのナンバーとなった、ヴィヴァルディの「春」、マイケル・ナイマン作曲の映画音楽、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」、美空ひばりの歌った「お祭りマンボ」等である。 それに加えて、今回の公演のために新たにアレンジした、ジャズの名曲「A列車で行こう」とピアソラのタンゴ「Michelangelo'70」は前半の見所となったのではないだろうか。この2曲は、5人のメンバーが総出演で弾き、奏者同士がすれ違ったり、重なったりあったりすることによって、より動きのあるナンバーに仕上がった。特に、新たな試みだったのだが、「Michelangelo'70」の2人組で回転しながら演奏するシーンは、タンゴを踊っているかのごとく見えたと、観客からも好評を得た。 1部の衣裳は夫々、緑、紫、青、ピンクのA-POCで、華やかにステージを彩った。 2部は水嶋作曲のオリジナルナンバーで構成された。 神秘的な「森の記憶」、情熱的な「Solitude in june」と、生成りのエクリュを身に纏った3人の奏者が舞うように音を紡ぎ出した。 そして、即興演奏を交えた和風の「風雅」から、舞台上の3人と客席側の2人が呼応してはじき合う「天空の鼓」、デュオの「鈍色の扉」、激しく、斬新な動きの「天蓋の踊り」へと続く一連の流れは、千変万化する〃ストリングラフィ〃の音の表情を、豊かに感じさせたであろう。 特に「天蓋の踊り」は音の多様性、動きのバリエーションが複雑に絡み合い、水嶋ワールドの魅力を饒舌に物語った。 今回の公演は文字通り満席で、当日券も直ぐに売り切れる程の盛況振りだった。アンケートも好評で、「音と動きがマッチしていて、耳と眼に楽しい」「懐かしい音がした」「不思議な世界を体感した」等、沢山の感想が寄せられた。 現代美術館でコンサートを行なえたこと、イッセイミヤケ氏との素敵な出会いがあったことに感謝しつつ、今回の公演の報告を終わりたいと思う。 (記: 篠原 元子) |
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