HOMEKAZUE MIZUSHIMASTRINGRAPHYSTUDIO EVE

大阪 ザ・フェニックスホール ティータイム コンサート vol.34
水嶋一江&ストリングラフィ・アンサンブル




ザ・フェニックスホール ザ・フェニックスホール
ザ・フェニックスホール ザ・フェニックスホール



ティータイムコンサートは年間5回、シリーズ企画で行われており、今回のストリングラフィ・アンサンブルはその34回目に当たる。クラシックのコンサートが多い中で、ストリングラフィ・アンサンブルは大変ユニークな企画であり、このシリーズのファンの方にどのように受け入れられるか少々不安であったが、企画事業部長の酒井氏のご協力もあり、ホール全体を自由に使い、縦横無尽に楽器をセットした空間の中で演奏者と観客が一体となって濃密な時間を共有することが出来たように思う。

ホールを大きな楽器にしてその中でストリングラフィの面白さを体験していただきたいと言う考えから、通常の使い方を変更し、ホールの中央に約4mの幅で特設の舞台を造ってソプラノ・アルト・バスの3セットを設置し、その両側の観客席から演奏を観るという形になった。またオリジナル曲の演奏では2階席も利用し、ホールを多層的に使用しダイナミックな演奏を創り上げた。特に2階席からはストリングラフィのオブジェとしての美しさ、パフォーマーの動きの面白さを俯瞰することができ、音楽的のみならず演劇的な時間と空間を味わうことができたのではないだろうか。

第1部は、既成の曲を演奏、ティータイムを挟んで、第2部は、水嶋がこのフェニックスホールのために作曲した「The Shadow of Wings」を中心に、オリジナルを演奏した。第1部の終りに設けた質問コーナーでは次々に質問が飛び出して大いに盛りあがり、大阪の人の熱気はさすがだと感心したすると同時に、観客の積極的な参加によってプログラムが生き生きとしたものになるのだということを実感した。

ザ・フェニックスホール
ティータイムコンサートシリーズvol.34

日時 2002年4月26日(金)14:00〜
作曲・構成 水嶋一江
演出 八重樫みどり
出演 水嶋一江 井上丸 篠原元子 
 中村菊代 中村 彩
衣裳デザイン 櫻井利彦(SQNABICONA)
音響 尾嶋砥
観客数 約280名




公演プログラム から


ストリングラフィはこの4月でちょうど10周年を迎えます。今回のティータイムコンサートでは、10周年の感謝の気持ちを込めて、新作を含めた幅広いジャンルのプログラムでストリングラフィの魅力をお楽しみいただきたいと思います。

第一部

●“ ―― 第一楽章“(”四季“より) 作曲: アントニオ ヴィヴァルディ

編曲:水嶋一江

四季“の楽譜には各曲の雰囲気を表わした表題的詩文が付けられている。今日演奏する”春“の第一楽章には「春が来た。小鳥たちは楽しげに歌の挨拶を交わし…」と書かれている。この詩文にインスピレーションを得て、楽器音と自然音の両方を表現することが出来るというストリングラフィの特徴を生かした編曲を試みた。

● “マイケル・ナイマン組曲(“バードリスト” ―― “英国式庭園殺人事件”より

“メモリアル”――“コックと泥棒、その妻と愛人”より) 作曲:マイケル ナイマン

編曲:水嶋一江

“バードリスト”メモリアル“はグリーナウエイ監督の映画のためにイギリスの現代作曲家、マイケル・ナイマンが創った曲だ。原曲には弦楽器などクラシックの伝統的楽器が用いられているが、不安定な音程や軋み音を出して不安感、焦燥感などを巧みに演出している。アレンジに際しては特殊効果を研究しながら現代音楽独特のボキャブラリーを追求した。

●“メリークリスマス Mr.ローレンス(”戦場のメリークリスマス“より)

作曲:坂本龍一

編曲:水嶋一江

“メリークリスマス Mr.ローレンスのオリジナルバージョンはシンセサイザーによって合成された音色が無限のイマジネーションをかきたてる。ハイテクなのに懐かしい音。ストリングラフィは蓄音機から聞こえてくるヴァイオリンの音の様だといわれることがある。このローテクな楽器で、シンセサイザーの音色のパレットにどこまで迫れるかチャレンジしてみた。

●“お祭りマンボ” 作曲:原六郎

編曲:水嶋一江

昭和の歌謡曲には今聴いても新鮮に響くしゃれた曲が多い。美空ひばりの唄った“お祭りマンボ”(昭和27年)をベースに、祭り太鼓のリズムや歌舞伎の下座音楽を取り入れ、戦後の日本の風景をイメージしながらアレンジしてみた。

●“カノン” 作曲:ヨハン パッヘルベル

編曲:水嶋一江

バロックの名曲をアンコールピース用にアレンジしたものだ。冒頭2小節のコード進行が永遠に繰り返されつつ、上声部にカノンが展開されるている。前奏、通奏低音部にピチカートを使用し、繰り返されるリズムの心地よさを強調している。

 

第二部

●“The Shadow of Wings” (2002) 作曲:水嶋一江

第二部ではストリングラフィのために作曲したオリジナル曲を中心に演奏する。

The Shadow of Wings”は今回のコンサートのために書き下ろした曲だ。不死鳥が一杯に両翼を広げ世界に影を投げかけながら飛んでいくイメージを念頭に置いて創作した。楽器の設定はフェニックスホールの形態を生かし、オリジナルデザインを設計した。

● “Stringraphy Tapestry” (1996) 作曲:水嶋一江

ストリングラフィに初めて“ドレミ”が登場した時に創った曲である。当初は1セット4〜8本しか弦がなかった。ちなみに現在では15〜25本ある。楽器の発展、演奏者の成長に伴って何度も改訂を繰り返しながら弾き続けてきた思い出の詰まった一曲だ。

●“越天楽” 雅楽

編曲:水嶋一江

ストリングラフィの糸を45本一遍に擦ると笙の音の様に聞こえる。ゆっくりとした旋律を奏でるとピッチのゆらぎが篳篥のように響く。はじく音は筝、ギターのピックを使ってはじくと鼓(鞨鼓、太鼓)、という具合に次々と邦楽器の音色が生まれてくる。“越天楽”をテーマに多彩な音色を駆使して自由に編曲した。

 

●“Solitude in June(目眩)1997) 作曲:水嶋一江

ヒッチコックに“めまい”という作品があるが、高所恐怖症の主人公が渦巻きに引き込まれていくような映像が印象的な映画だ。私も高所恐怖症なのだが、人によってはストリングラフィがめまいを起こさせるようだ。特に乱視の人は何百本も張り巡らせた糸で距離感覚が狂い、手前の糸と奥の糸、どちらがどれだかわからないという恐怖?を味わうことがあるそうだ。映画の“めまい”では高所恐怖症とロマンスが絡まり合い、ストーリー自体も奈落の底に落ちていくような独特の感覚がある。“Solitude in June(目眩)では“めまい”を観たときに感じた、フォビアとロマンのスリリングな関係をストリングラフィで表現した。


HOMEKAZUE MIZUSHIMASTRINGRAPHYSTUDIO EVE